雑記

チューバは吹奏楽の君主である

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どうもーやまむらこういちです。

台風が通って夏が舞い戻ってきてしまいましたね。それでも夜は多少涼しくなってきましたけど、昼間はまだまだ暑い日が続いています。

さて、先日とある番組で10代の吹奏楽経験者に聞いた不人気楽器ランキングでチューバが1位になったことに対して、胸中を語ろうと思います。

10年経験者として

私自身、中学から大学までチューバパートでしたので、チューバのことはそれなりにわかっています。そもそもは私もメロディに憧れて、中学のパート決めでは第一希望アルトサックス、第二希望フルート、第三希望トランペットとしていましたが、誰も手を挙げずに長々と続く沈黙が嫌でチューバに手を挙げたのが始まりでした。

当初140㎝ほどしかない身長にはチューバという楽器はあまりに大きく、手に余っていました。供給できる息も少なく、すぐに酸欠になってしまう。足に楽器を乗せると口元よりマウスピースのほうが高い位置になってしまうため、もう一つ椅子を用意してそこにチューバを置いて演奏する始末。持ち運びも重さのせいで大変で、しばらくは階段の上げ下げはケースと楽器本体を分けて運搬しなければならない状況でした。

楽譜も普通にヘ音記号として読むと楽器の調子とずれているため、楽譜を一つ高く読まなければいけない。楽器はB♭の調子なため、チューバでドといえばB♭。トランペットなんかもそうですが、あちらは楽譜もちゃんと移調して書かれており、楽譜上のドがトランペットのド、すなわちB♭になるように書かれています。それに対してチューバやユーフォ、トロンボーンなんかの楽譜はヘ音のC譜。楽譜上はピアノと同じであるが、楽器がB♭調子なので、そのまま演奏すればずれてしまう。なんとも難儀な楽器でした。

与えられる楽譜は中学ということもあって簡単なものばかり。全体のレベルが低めの楽譜は、チューバの楽譜は単純そのもの。基本的にリズムは四分音符ばかりで、そのラインもベースをずっと打っていくようなものばかり。みんなが譜読みに勤しむ中、渡されてすぐにでも合奏できるようなものがほとんどでした。メロディなんかかけらもなく、合奏練習中に特に指揮者に注目されることもなく、なんとも魅力に欠ける楽器でした。

作曲や編曲をするようになって

自分が作曲や編曲をするようになると、メロディの次にはチューバパートに取り掛かるようになっていました。面白いチューバのラインを作ったうえで、そこにハーモニーや対旋律などを乗せていくようにしたわけです。これはひとえに自分がチューバパートだったからであって、少なくとも自分が書く曲くらいはやりがいのあるチューバ譜にしようと思っていたからです。

チューバが不人気なのは、その重さや演奏の大変さよりも楽譜の魅力によるものだと思っています。いつもボンボンしているイメージが大きく、なんともつまらないように見えたのでしょう。吹奏楽の名曲といわれるものにはチューバのラインがとても面白いものが多く、それによって曲の躍動感を得ています。

しかしながらポップスや簡易なオリジナル曲などでは、やはりイメージ通りの動きしか与えられないことが多いのです。チューバの不遇は楽譜の不遇と言っても過言ではないくらい、あの譜面を見た時の絶望感は大きいものです。

和声や音楽理論を学んでみて

古典和声では基本的にソプラノ、アルト、テナー、バスの四声で進行させることが多いです。3和音であればどこかが同じ音を与えられることになります。基本形とはバスにその和音の基礎となる根音を置き、上三声に一つずつ音を置いていきます。上三声はどのパートがどの音を担当しても構いません。ドミソの和音であれば、バスはドで、残るソプラノ、アルト、テナーがそれぞれドミソを一つずつ採用すればいいわけです。

バスが担当する音が第三音(ドミソならミ)となれば第一転回形といい、大五音(ドミソならソ)であれば第二転回形といいます。これはバスが担当する音に関してのみつけられた形式であり、バスが変わらなければ、ソプラノ、アルト、テナーが担当の音をどう変えても転回形は変わりません。すなわち和声の表情はバスが担っているといえます。

かの著名な芥川也寸志はこの転回形の状態を以下のように述べています。

「基本位置のバスは、偉い人がそれ相当の地位におさまって、はたから見ても自然で支配力も大きく安定しており、第一転回のバスは、平々凡々な人間が何かの拍子で偶然高い地位についてしまい、本人もまわりの人も落ち着かず、見た目にも不自然で、とても長続きはしそうにないという感じであるのに対して、第二転回形のバスは、偉くはないが偉くなろうとあせっている人間が、うまいことには高い地位につき、やれなんだかんだと張り切っているようなもので、とにかく目につき耳につくのである。」

こういった「聴いた感じがことなる」のはバスが何を担当したかによるものであり、ほかのパートではないということです。「和声音楽では楽曲全体を支える調整を支配するバスの絶対的な権威の上に、旋律という第二の権威者がおり、ほかの声部はそれらにつきしたがい、けっして権利を主張することはない。いわば和声音楽というものは、バスという君主と、旋律という王妃の君臨する立憲君主制体である・・・」とも芥川は述べています。

すべてのパートが独立して旋律を奏でる多声音楽はこの通りではないですが、我々が基本的に取り扱っているのは和声音楽。多声音楽はフーガのようなものを思い浮かべてもらえばいいでしょう。旋律すら、バスの権威に乗っかっている存在であるということからも、その重要性はとても高いことがうかがえますね。

曲の表情を左右する存在として

吹奏楽でバスを担当するパートはいくつかありますが、それでもやはり筆頭はチューバです。ほかのパートがメロディや対旋律の補助にまわることがあっても、チューバはほとんどありません。チューバはバスの要であって、つまるところ吹奏楽の中の君主といっても過言ではないのです。

結局はチューバに旋律など必要ではなく、バスの要としての適正な仕事が与えられていれば、最も魅力あふれるパートであるはずです。しかしながらとりわけ中学校や高校の部活で取り扱う曲には、そういった適正な仕事を与えてくれるものが少なく、チューバが己の仕事を全うできていないのが現状です。これではチューバが不人気になるのは当然ですね。

私が気に入る曲は、意識していなくてもチューバがおもしろい動きをするものが多いです。チューバが曲の表情を決定したり、軽快さを左右しているような曲こそ、仕事を全うしている曲だと言えるでしょう。

今後も私は曲を書いていく予定ですが、もっともっと突き詰めてバスの動きを付けていきたいところです。奏者の楽しさだけではなく、曲全体のまとまりや表情を増すためにも大事な要素ですからね。ほかの曲をたくさん聞いて研究しようと思います。

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