どうもーやまむらこういちです。
先日、Saxアンサンブル用の楽譜作成についての記事を書きました。元がとても長いので2パターンのカットバージョンを提案して、無事にどちらにするか決定したところです。あとはゴリゴリ書いていくだけなので早速取り掛かっています。
さてさて、楽譜を書くときに気を付けることはたくさんありますが、その一つとして見やすい楽譜にするということはことさら重要です。アーティキュレーション一つとっても音符からどれだけ離して書くか、フォルテやクレッシェンドなどの置く位置にも気を配る必要があります。
音符もただ均等に並べればいいのではなく、棒が上下どちらについているかによっても間隔を調整してあげなければなりません。浄書家という職があるくらいですから、私のような素人にはとても扱いきれないほど深いものです。プロが作った楽譜を見ながらあれこれ吸収はしているつもりです。それでもまだまだなんです。
音楽とは時間を耳で感じ取るものと誰かが言っていたけれども、楽譜は本や絵画のようにじっくりまじまじと見るものではありません。奏者にとってはその瞬間その瞬間で書かれているものを正確に読み取り楽器や声帯を通して音に変換していかなければいけません。時は待ってはくれませんから、一瞬で読み取れる楽譜を用意してあげなくてはいけません。
さてさてなぜこんなことを書いているかというと、今書き始めているラプソディー・イン・ブルーの楽譜でやや引っかかることがあったからです。
これはとある部分の譜面です。本当は間にさらに3小節あるのですが、そこは全く一緒なので今は省略してあります。
記譜のルールに従うか、動きを重視するか
上下ともに同じ動きを書いています。しかしながらぱっと見違う動きに見えると思います。下は実際に元の楽譜通り書いたもので、上は私が書いたものです。4小節のうち最初の3小節は同じリズムの繰り返しです。最後の1小節は先の3小節とは動きが違います。まずは最初の3小節から見ていきます。
私が書いた上の楽譜は通常の譜面のルールに従って書いたものです。拍子記号が抜けていますが、4/4です。
普通楽譜は拍子が分かりやすいように書くのが基本です。8分音符や16分音符は旗がありますが、連続する場合は連桁(れんこう)という太い線で結びます。基本的にはこの連桁は拍子ごとにまとめておくのが普通ですが、特殊な場合はあえて連桁を長くしたり短くしたり、はたまた小節線を跨いだりすることもあります。
元の譜面(画像では下の段)は連桁が拍通りではなく、動きの塊として書いてあります。実はこの部分はSaxカルテットとなっていて、ほかのパートも同じような動きをしています。ほかのパートと動きを合わせて意識しやすいように、こういう書き方をしているものと思います。3拍目裏から4拍目まで4分音符を使っているのも、一般的なシンコペーションとしてよく用いられる書き方です。
しかしながら、大した音楽技術を持っていない私からすると、この4分音符がどうもわかりにくいと思ってしまうのです。仮に、この4分音符の直前がただの8分音符であれば全く問題ありません。もしくは直前の16分音符3つが3連符だったら、私でもすぐに理解できます。16分音符3つの3連符はすなわち8分音符と同じ長さですからね。
それぞれの動きの塊、すなわちここでは最初の8分休符、16分3連、16分3つ、16分3つ、4分1つ、8分1つという動きはとても分かりやすいのですが、実際演奏する際は、今自分がどの拍にいるのかがわかりにくいような気がします。もちろんこういう部分は数回練習することでリズムを体が覚えますので、大体は問題にならないのですけどね。
動きの塊はこの場合はスラーでどこが塊なのかは理解できます。それに加えて拍もわかりやすいのは上のほうだと思うのですが、皆さんはどうでしょうか(もしよかったらコメント欄にて教えてください!)。経験豊富な方ならこういった楽譜をいくつも見ていて、何の疑問も持たないかもしれません。
拍が取れるリズムかどうか
次に4小節目を見てください。32分音符と16分音符が混じり、ぱっと見た感じなんじゃこりゃ!って感じですが、リズムそのものは単純です。なぜかこのリズムは元の楽譜では拍通りの連桁となっていました。逆に私はここを動きの塊ごとに分けたのです。
これも結局私自身のレベルに合わせた形ですが、正直この拍通りの連桁は見にくかったというのが感想です。この部分はバリトンまで皆同じリズムですが、このリズムを拍を感じながら演奏するのは私には厳しいです。同じリズムを5回繰り返すということに集中するためには、上の書き方のほうがわかりよいと思ったのです。
元の楽譜は福田洋介氏が書いたものですから、おそらく考えに考えて書かれたものだと思います。ちゃんと楽器をやっている人にとっては下側の書き方のほうが見やすいのかもしれません。それは、自分のパートだけではなく、ほかのパートの動きも感じられるように書かれているからです。前半3小節は特に、アンサンブルなんかではわかりやすいのかもしれません。
今回は指揮者のいないアンサンブル用の編曲ですから、元の楽譜の通り書いたほうがいいかもしれません。まあどちらの書き方にしろ、本番まで何回も練習するでしょうから、もはや楽譜にかじりつくこともないでしょう。4小節目は…もうちょっと悩むことにします。やっぱりこの部分だけは見にくい気がするので。
連桁一つとっても、楽譜を作っている人が苦労して書いていることがわかります。臨時記号もそうですが、同じ音を表すのに何通りかの書き方がある場合、どの書き方を採用するかというのは吟味する必要があると思います。作曲者や編曲者の意図を汲んだ書き方や、楽譜の基本的なルールにのっとった書き方、見やすさを重視した書き方…。いろんな楽譜を見ながら、私は少しでも見やすい楽譜が作れるように精進したいところです。